建築基準法仕様規定による設計と許容応力度設計の違い

能登半島地震から3か月が過ぎ241名の方が亡くなられました。
亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

今後も大きな地震がまた来ると言うことを前提で設計業務にあたならければなりません。

お洒落でカッコいい本物の建物であるための必要条件として、安全な建物であると言うこと。
安全の確認が不十分で安全な建物と言う確認ができていなければ、ただ単にお洒落でカッコいいだけの建物になってしまいます。
大きな地震や台風が来た時に大きく揺れたり、壊れたりしたら本末転倒です。


現建築基準法では、階数が2階以下で延べ面積が500㎡以下の特殊建築物以外の木造建築物であれば建築基準法のいわゆる「4号特例建築物」と言われ構造図や壁量計算等の図面を建築確認の際に添付しなくてもよいことになっています。
添付しないでいいだけであって、構造の安全性は設計者の責任において確認しなさいと言う法律です。

構造安全性の確認の仕方は設計者によってまちまちです。
階数が2階以下で延べ面積が500㎡以下の木造建築物であれば、建築基準法・仕様規定だけで設計する設計者もいれば、建築基準法・仕様規定プラス構造計算まで行い安全を確認する設計者もいます。
どの方法で設計したかは設計者に尋ねればすぐわかります。

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当事務所のホームページに構造計算の重要性を書いていますが、
今回は、建築基準法(仕様規定)と構造計算(許容応力度計算)の各設計の違いについて総論的に書きます
各項目の各論的には時間を見計らい書いていきます。

今回、全部で20項目ほど箇条書きしたものを準備していますが、分かりにくいので一般の方々や経験の浅い若い設計者にもわかりやすいようにユーチューブ動画で説明を付けておきます。

比較1 ユーチューブ動画説明 → https://youtu.be/GELoTgXrnlI
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比較2 ユーチューブ動画説明 8.前編→ https://youtu.be/jD_x1TAQOW4
8.後編→ https://youtu.be/d-MdUZaREMQ
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比較3 ユーチューブ動画説明は只今準備中です
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比較4 ユーチューブ動画説明は只今準備中です
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比較5 ユーチューブ動画説明は只今準備中です
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比較6 ユーチューブ動画説明は只今準備中です
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建築基準法・仕様規定の設計と許容応力度設計の大きな違いを三つほど上げます。

一つ目は、建築基準法・仕様規定には水平構面の具体的な基準がないと言うこと。
地震力や風圧力を鉛直構面(耐力壁など)で受けますが鉛直構面を支えているのは水平構面(屋根面、、火打梁、床面)であること。

野球に例えると、耐力壁などの鉛直構面をピッチャー、屋根面や火打梁、床面などの水平構面をキャッチャーに例えることができます。

ものすごいピッチャーがいて剛速球を投げたとしてもその剛速球をしっかりと受け止める信頼のおけるキャッチャーがいないといけません。

地震に強いように耐力壁などの鉛直構面(ピッチャー)だけを強くしてもそれを受け止めてくれる水平構面(キャッチャー)がしっかりしていないと強くならないわけです。

地震力や風圧力がかかった時、力の流れは、屋根から桁面、壁面、床面、土台、基礎、地盤へと流れて行きます。
力がスムーズに流れて滞らなければ揺れ方も少しで綺麗に揺れます。

水平構面には地震力や風圧力がかかった時、耐力壁を支え、伝わった力を分配し下方の耐力壁へ力を伝達するという重要な役目があります。

基準法には水平構面の仕様規定「床組み及び小屋ばり組の隅角に火打材を使用すること」と言う基準だけで、具体的に火打材や合板をどの程度設置しなければならないかという基準が示されていません。

耐力壁を増やせば増やすほど地震時や風圧時には水平構面には大きなせん断力がかかります。かかったせん断力よりもその床や屋根・火打構面が持つ許容せん断耐力の方が大きくなければなりませんが、建築基準法仕様規定には具体的な基準がないのでそれが分からないわけです。
許容応力度設計では、水平構面にかかる地震力や風圧力によってかかるせん断力を計算で求めることができ、安全であるか確認することができます。

二つ目は、梁や桁等の横架材の断面の大きさの仕様規定がないこと。
梁や桁には上部から荷重がかかり曲げモーメントやせん断力、たわみと言う変形が生じます。
これらの応力や変形に対する梁や桁の断面の仕様規定がないのでその梁や桁の断面の大きさでよいのかが分かりませんが、許容応力設計では必要な断面の大きさを計算で求めることができ安全であるか確認することができます。

三つ目は、基礎底盤や立上りには地盤からの地反力がかかり曲げモーメントやせん断力がかかります。
仕様規定の設計では、基礎の最低限の断面と最低限の鉄筋の配置の基準は示されていますが、曲げモーメントやせん断力に耐えられる断面であるか、また鉄筋量が足りているかは分かりません。また床下を点検するための人通口の基準も示されていません。
許容応力設計では必要な断面の大きさや必要な鉄筋量を計算で求めることができます。
曲げモーメントやせん断力を求めることにより人通口を設ける際の安全な位置やどのような補強をするか補強の方針を立てることができます。


小規模な木造建築物は建築基準法・仕様規定を守って設計されていれば建築基準法に違反することはありませんし、とりあえずは安全であると言えます。
ただ、設計者によって構造安全性をどこまで確認したかは差があると言うことははっきりしています。
意匠デザインは、設計者が100人いれば100通りの答えがあると思いますが、構造の安全性に関しては、答えは一つか二つか三つくらいしかありません。
今後来るであろう南海トラフ地震や日奈久断層帯による大地震が起きた時に大きな被害が出ないことを祈ります。

参考図書
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